美術
唐絵目利の絵画 / 北斎と広重 2025年11月26日(水曜) ~ 2026年2月1日(日曜)
唐絵目利の絵画
江戸時代、諸外国との交易の窓口であった長崎には「目利」と呼ばれる人々が貿易に携わっていました。目利の仕事は輸入された様々な品物を鑑定し、その価格を判断することであり、高度な専門性と見識が必要とされました。
目利のうち絵画を専門に扱ったのが「絵目利」です。絵目利は後に「唐絵目利」と称されるようになりますが、その役職が制度化されたのは元禄10年(1697)のこと。この時任命されたのが渡辺秀石(1639~1707)であり、以降、渡辺家は唐絵目利を世襲することとなりました。その後、広渡家、石崎家、荒木家もこの職を世襲したことから、彼らは唐絵目利四家とも呼ばれます。
唐絵目利は中国絵画を主とする輸入絵画の価格評価に深く携わる一方で、幕府や大名家から公務を仰せ付かる御用絵師を兼務するものもおり、交易品や諸外国の文化・風俗の記録を行うための絵師としての技量が求められました。本展では、対外貿易の最先端にあった彼らの作品を通じて、江戸時代の長崎における文化交流の足跡をたどります。
北斎と広重
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)は、日本に強いあこがれを抱いていたことでも知られています。1880年代のパリでは、日本から輸入された美術品への嗜好、ジャポニスムが一世を風靡し、ファン・ゴッホも1886年のパリ移住と相前後して浮世絵版画に注目し始め、弟のテオとともに収集し、現在そのコレクションはアムステルダムのファン・ゴッホ美術館に伝存しています。
言うまでもなく葛飾北斎(1760~1849)と歌川広重(1797~1858)は、江戸時代後期の浮世絵を代表する絵師ですが、その名声は日本だけにとどまりませんでした。従来の西洋絵画には見られない、その意表をついた構図と、清新な色彩感覚により、特に1880年代のパリで広く愛好されるようになりました。ファン・ゴッホもその作品を敬愛し、現在特別展に展示中の《夜のカフェテラス》(1888)にも、歌川広重の浮世絵版画からの影響が指摘されています。
特別展「大ゴッホ展夜のカフェテラス」の連動企画として、この展示では、館蔵の美術コレクションから、北斎・広重の浮世絵版画を紹介します。
展示作品リスト
- 唐絵目利の絵画
- 長崎唐館交易図巻 渡辺秀詮筆 江戸時代、18世紀後期~19世紀初期 絹本著色 1巻 当館蔵
- 柘榴に白頭翁図 伝・渡辺秀石筆 林道栄賛 江戸時代、17世紀~18世紀前期 絹本著色 1幅 当館蔵
- 達磨図 渡辺秀実(鶴洲)筆 文化元年(1804) 紙本墨画淡彩 1幅 当館蔵(池長孟コレクション)
- 蘭船図 石崎元章筆 江戸時代、18世紀中期 紙本著色 1幅 当館蔵(池長孟コレクション)
- 尾長雉子図(雌)、尾長雉子図(雄)、尾長青音呼図 石崎融思筆 江戸時代、18世紀末~19世紀中期 紙本著色 各1枚 当館蔵(池長孟コレクション)
- 万国人物図粉本 広渡湖秀筆 宝暦14年(1764) 紙本墨画 1巻 当館蔵(池長孟コレクション)
- 酔仙図 広渡湖秀筆 江戸時代、18世紀後期~19世紀初期 絹本著色 1幅 当館蔵(池長孟コレクション)
- 唐子図 荒木元慶筆 斗山宗樞賛 江戸時代、18世紀 紙本著色 1幅 当館蔵
- 双鯉図 荒木元融筆 江戸時代、18世紀末期 紙本著色 1幅 当館蔵(池長孟コレクション)
- 北斎と広重
- 北斎漫画 葛飾北斎 紙本木版色摺 11冊のうち2冊 文化11年(1814)以降
- 江戸八景阿蘭陀画鏡 吉原 葛飾北斎 紙本木版色摺 袋付8枚のうち1枚 寛政9年~文政2年(1797~1819)
- 江戸八景阿蘭陀画鏡 観音 葛飾北斎 紙本木版色摺 袋付8枚のうち1枚 寛政9年~文政2年(1797~1819)
- 江戸八景阿蘭陀画鏡 堺町 葛飾北斎 紙本木版色摺 袋付8枚のうち1枚 寛政9年~文政2年(1797~1819)
- 吉原楼中図 葛飾北斎 紙本木版色摺 5枚続 文化8年(1811)
- 富嶽三十六景 武州千住 葛飾北斎 紙本木版色摺 1枚 天保2年(1831)ごろ
- 山海見立相撲 摂津有馬山 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 安政5年(1858)
- 六十余州名所図会 阿波 鳴門の風波 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 安政2年(1855)以降
- 六十余州名所図会 播磨舞子の浜 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 嘉永6年(1853)以降
- 名所江戸百景 猿わか町よるの景 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 安政3年(1856)以降
- 名所江戸百景 はねたのわたし弁天の社 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 安政4年(1857)以降
- 名所江戸百景 廓中東雲 歌川広重 紙本木版色摺 1枚 安政4年(1857)以降


