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理念と目的・基本的性格・使命

理念と目的

現代は、それぞれの国が孤立して存在することは許されない。
一国の経済、政治は、他国のそれと無関係であることはできず、文化や思想の面でも盛んに相互交流がなされるようになった。
西欧文明に対する東洋文明とか、外国思想に対する日本思想というようなことを強調することは、もはや古く、われわれは、そのような概念を超えて、国際交流を図り、世界的視野にたって一国の文化とか思想を考察しなければならない。
ところで、わが神戸市は、国際港都という特異な性格を持つ都市である。
古くから、中国や朝鮮との関係があり、さらに近代以降は、欧米諸国や東南アジア各国との交渉が盛んで、いまにつづいている。
いわば、神戸は、日本を代表する世界各国との交流の窓口であり、玄関口である。
以上の点をふまえて、当博物館は『国際文化交流、東西文化の接触と変容』を主たるテーマとしている。
東西文化の接点にあって、どのような交流が行われ、接触と変容があったかという側面から追究して、日本文化および日本人を考えなおそうとするものである。
つまり、当博物館は、日本文化や日本人の本質あるいは態様を究明するという大テーマを掲げて、日本の近未来への指針を探ろうとしている。
と同時に、どうすれば住みよい神戸になるか、という理念にもとづき、神戸のもつ特異性やその形成過程の追究、諸外国事情の調査研究等を行ない、それらを、神戸市民に直接役立て、さらに国際親善にも寄与したい。

基本的性格

原始、古代から現代に至るまでの、われわれの祖先の生活、文化の諸相をは握し、いかに国外からの影響を受け、また、影響を与えたかを調査研究し、その成果を展示する。
また、わが国と諸外国との文化交流、接触と変容の中で、本市が接点としていかに重要な役割りを果たしたかを市民が認識するとともに、広く全国民が理解するよう、施設を開放し、その利用に供する。
以上の基本的性格をうけて

(1) 本市のもつ風土性や神戸ッ子気質の形成過程を追究し、市民意識の向上と、将来の豊かな住みよい神戸の未来像を探る。
(2) 市内の外国人の在住に至る歴史的経緯(居留地、異人館等)と実態をは握し、国籍は異なるが同じ神戸市民としての相互理解を図るよう努めるとともに、本市と関連の深い諸外国の事情をも明らかにする。
(3) 旧市立考古館の館蔵品を含む市内出土の桜ヶ丘銅鐸群や土器、石器、金属器を中心とした考古資料を扱い、原始、古代の日本文化や日本人が大陸との交渉の中で、どのような影響を受けたか、そして、独自の文化を形成したかを明らかにする。
(4) 旧市立南蛮美術館の館蔵品を中心とした美術資料を扱い、日本の美術が諸外国からどのような影響を受け、どのように吸収、展開したかを明らかにする。
(5) 文化人類、考古、美術資料の収集、調査、研究、展示等については、本市ならびに周辺地域の古代から現代までを対象とするが、当博物館の性格上、国内全域はいうまでもなく、関連諸外国に及ぶことがある。


昭和50年 神戸市立中央図書館博物館等調査委員会
博物館部会答申

使命

神戸市立博物館では、昭和50年の『神戸市立中央図書館博物館等調査委員会博物館部会答申』をふまえ、当館の存在意義と使命をあらためて明らかにする作業に平成16年度から取り組み、使命の策定について平成18年11月に博物館協議会に諮問しました。協議会に設置された使命策定検討委員会で検討され、平成19年4月に答申された『神戸市立博物館の使命』を下記のとおり5月に決定しました。

博物館の存在意義

20世紀は、国々の経済力が覇を競い国力をはかる指標になり、その衝突が大きな戦争を引き起こした時代でした。21世紀は、地球温暖化をはじめ国を超えた問題が発生し、もはや経済力だけではその解決が困難になり、科学を含めた文化力が大きな力を発揮することがのぞまれています。
文化は、それぞれの地域の人々が長い年月にわたって営々と築き上げ、次の世代に引き継がれてきた貴重な共有財産です。博物館は、それらの地域の共有財産を掘り起こし、収集・保全を図り、研究と公開を通じて人々が楽しく学ぶ機会を提供します。また、地域の人々と協同して文化を育てるとともに、地域の活性化をもたらす役割を果たすものでなければなりません。
経済力が、文化・芸術を支える時代から、文化・芸術が経済社会のあり方を変える時代に移ろうとしています。これからの博物館はまさにこの点にその存在意義が求められています。

博物館の基本的性格

神戸は、古くから流通の大動脈であった瀬戸内海と、都(畿内)を結ぶ結節点に位置し、東アジアとの貿易や交流の窓口ともなりました。とくに幕末の開港と、外国貿易の開始に見られるように、東西文化交流の接点としての役割をはたしてきたわが国の代表的な都市です。また、旧外国人居留地をはじめとする国際色豊かな文化を持つと同時に、その後背地には古代以来の歴史に培われた文化が存在し、両者が相まって多様な神戸文化が形成されています。
神戸市立博物館は、この神戸の歴史的特性をふまえて、「国際文化交流、東西文化の接触と変容」をその基本テーマとしています。このテーマのもと、住み良い神戸の姿を探り、多文化共生の街・神戸を未来に新しく切りひらいていくために、以下の具体的な使命を果たしていきます。

(1)神戸を中心とする考古、歴史資料と、東西文化の交流に関する南蛮美術、古地図資料などの調査・研究・収集を通じて、多様な神戸文化の特徴と文化交流の態様を明らかにします。その成果を市民・利用者と共有するとともに、これを次世代に継承し、地域の発展に役立つ「知の拠点」となります。
(2)市民・利用者が、優れた国内外の文化・芸術にふれあう機会を積極的に「提供する」博物館として、また、神戸の文化にこれまでにない魅力をつけ加えるために新たな調査・研究を「提案する」博物館、その成果を「発信する」博物館としての役割を果たします。
(3)博物館を利用するすべての人々が、知りたいこと、学びたいことに積極的に対応し、多くの利用者が、集い、楽しみ、憩うことができ、また、神戸を愛し、誇りとする拠りどころを得ることができる博物館としての役割を果たします。
(4)阪神淡路大震災の教訓を生かし、文化財を災害から守る重要性、コミュニティや市民の自発的な活動の大切さ、都市復興のなかで文化の果たす役割など、震災とその復興のなかで得た知見を全国に、世界に発信します。