研究紀要
研究紀要:第40号(2025年)
| 執筆者 | 論題 | 要旨 |
|---|---|---|
| 中山 創太 | 「池長美術館日記」をめぐって | 神戸市立博物館の美術コレクションの核ともいえる神戸出身の蒐集家・池長孟の旧蔵品。これらは国指定重要文化財の「聖フランシスコ・ザビエル像」、狩野内膳筆「南蛮屏風」をはじめとする「日本人の制作にかゝる異国趣味美術品」、すなわち南蛮・紅毛美術品の数々である。池長は、それらの美術品を公開し、その価値を広く一般の人々に共有するために、昭和15年(1940)に「池長美術館」を開館し、同19年まで5回にわたる展観を開催した。 本稿は、神戸市立博物館所蔵の池長孟関係資料に含まれる昭和17年から19年の開館時の活動を記録した「池長美術館日記」を紹介する。館内における池長と美術商や美術家などの来館者との交流、太平洋戦争下に開館していたことを示す記事を考察することで、今日の博物館と同様の活動を行っていた池長美術館の姿を提示する。 |
| 山田 麻里亜 | 【資料紹介】鼓嶽山人筆「薔薇に小禽金魚図」と南蘋派における金魚図の作例について | 本稿では、令和5年(2023)度新規購入資料である鼓嶽山人筆「薔薇に小禽金魚図」を取り上げる。十八世紀半ばに制作された本作品では、金魚に表情をもたせるという、当時としては極めて独創的な表現がなされている。日本金魚図の歴史に新たな新風を吹き込む作例として本作品を紹介するとともに、鼓嶽山人と同じ南蘋派の画家たちによる金魚図の作例を概観することで、南蘋派において金魚がどのように描かれていたのかを考察する。 |
| 永山 未沙希 | 【資料紹介】「天文分野之図版木」について―南波松太郎コレクションから― | 日本では、古代から中国の影響を受けてさまざまな天文図が作られた。なかでも、保井(渋川)春海の「天文分野之図」は、分野を日本に置き換えた初めての出版天文図として著名である。国内外にいくつも所蔵が知られているが、その版木については管見の限り、紹介されたことはない。本稿では、南波松太郎コレクション「天文分野之図版木」について紹介する。 |
| 小野田 一幸 | 【資料紹介】『近世刊行大坂図集成』補遺(2)―南波松太郎旧蔵資料から― | 本稿は、令和4年(2022)夏から1年半をかけて調査・整理した南波松太郎旧蔵資料から、平成27 年(2015)に上梓した『近世刊行大坂図集成』収録図、本誌前号で紹介した清林文庫が所蔵する刊行大坂図以外の3点を取りあげて紹介する。 1点目が、林氏吉永が刊行した『新板大坂之図』である。同図には、元文5年(1740)4月3日~延享元年(1744)5月1日が在任期間であった大坂城代酒井雅学頭を記載する。2点目が、野村長兵衛版『摂州大坂画図』で「大坂蔵屋敷所附合文」に城代として井上河内守を刻するもので、東西町奉行の変更が「大坂蔵屋敷所附合文」に反映される。3点目が、『摂津国一覧絵図全』の裏面に新たに刻した石河屋和助版の2色摺りの「改正摂津大坂図」を盛り込んだものである。 |



