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研究紀要

研究紀要:第35号(2019年)

執筆者 論題 要旨
塚原 晃 神戸市立博物館所蔵「聖フランシスコ・ザビエル像」の保存状態と表現解釈 イエズス会の創設会員で、アジアでの宣教活動、特に日本に初めてキリスト教を伝導したことで知られる聖フランシスコ・ザビエル(1506-52)は、16世紀終わりからその伝記がヨーロッパ中に広まり、1622年に聖人に列せられたことを期に、禁教下の日本でもその礼拝画制作の機運が高まった。現在神戸市立博物館が所蔵する「聖フランシスコ・ザビエル像」もそのような作品のひとつと推測される。
それでは、このザビエル像は何を表現しているのか?これまで様々な説が提示されてきたが、本稿ではこれを再考する前に、大正9年(1920)の発見から今日に至る、修理の履歴・画面状況変化の経緯を整理し、本像には一部を除き、表現解釈に影響のあるような大掛かりな改変はなされなかったことを実証する。これを踏まえて、本像の表現内容について、16世紀末から17世紀初頭のフランドルで制作された版画作品を軸に、図像的な考察を加え、さらにザビエルの伝記とイメージを世界中に広めた、トルセリーノ著『ザビエル伝』や、ローマ教皇によってその伝説を権威づけた『列聖大勅書』の記述から、強烈な神の愛に真摯に向き合おうとする彼の壮絶なまでの祈りを表現していることを提示する。
石沢 俊 川崎美術館研究(一) 文献資料からたどる川崎美術館と神戸川崎男爵家コレクション 明治23年(1890)9月6日、神戸市布引の川崎正蔵邸に開館した川崎美術館は日本初の私立美術館と考えられている。本稿では、川崎美術館と神戸川崎男爵家コレクションに関する研究の端緒として、同時代の新聞・雑誌等の文献資料から、川崎美術館と神戸川崎男爵家コレクションの歴史をたどる。
中山 創太 串玉杯の酒宴記録帖をめぐって びいどろ史料庫コレクションに含まれるガラス製の酒器「串珠杯」は、酒宴記録帖とともに伝わっている。4冊の記録帖は、甲(文化元~明治3年・1804-70)、乙(安政4~元治元年・1857-64)、丙(明治14~33年・1881-1900)、丁(明治38~39年・1905-06)からなり、100年ほどの酒宴記録が収められる。本稿では、本誌33号で言及した乙を除く甲、丙、丁について、主な参会者を確認していくとともに、参会者の一人として登場する「髙木侗山」が旧蔵者であったことを提示する。加えて、串珠杯は大阪福井村(現在の大阪府茨木市)に伝来した可能性についても言及する。