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研究紀要

研究紀要:第30号(2014年)

執筆者 論題 要旨
勝盛 典子 北山寒厳と馬道良の伝記と画業 北山寒厳(1767~1801)は長崎に渡来した明人馬栄宇の子孫。本名を馬孟熙、字を文奎という。その画業は江戸参府のオランダ人からフランドルの画家ファン・ダイクに匹敵すると言われ、田能村竹田が三十五歳で夭折した寒厳の才能を惜しむなど、漢画と洋風画のいずれにも優れていた。また、寒厳がはじめ画を学んだ父馬道良(?~1801)は大宮司で号を晋陽といい、寛政3年(1791)に幕命を受けて司天台にあるブラウ製の天地球儀を補修するなど、いずれも蘭学にかかわりが深く、谷文晁に大きな影響を与えた画家としても知られている。 本稿では、昨年度博物館が購入した『蘭詩画帖』の紹介をかねて、北山寒厳と馬道良の伝記と画業について再検討を試みた。まず、江戸時代の画史伝に起因する通称の混同を訂正し、「北山権之助」が馬道良の通称であることを明らかにしたうえで二人の伝記を整理し、「蘭学者見立番付」(早稲田大学図書館)について新たな解釈を付した。また、二人の作品について、中国絵画の影響や交友関係を軸に再考し、その意義を考察した。具体的には、寛政6年に谷文晁が主催した古画鑑賞会の出品作品を縮写した『書画甲観』、谷文晁の中国画学習に強い影響を与えた『顧氏画譜』の模写、新出資料の『蘭詩画帖』について詳細に検討し、強い意欲をもって中国画学習にはげみ同時代の画家たちの先導役を果たした北山寒厳の画業の意義を再確認する。
石沢 俊 研究ノート 鶴亭の印章 鶴亭(1722~85)は長崎出身の黄檗僧で、18世紀の京・大坂に南蘋風花鳥画を初めてもたらした重要な画家である。本稿では鶴亭が使用した80種類以上に及ぶ印章のなかから、彼の号に関する印章と印文の典拠の判明した印章について、その図版と使用時期を提示した。あわせて、印文と画題の呼応について墨梅図の例を紹介するとともに、印章の弟子への継承についても紹介した。
橋詰 清孝 国宝 桜ヶ丘銅鐸・銅戈の保存・保護を目的とした総合診断調査について ―最先端の精密計測技術を活用した九州国立博物館との共同研究の取り組み― 九州国立博物館との共同研究として、発見から50年の節目を迎える国宝桜ヶ丘銅鐸・銅戈の三次元計測及びX線CTスキャンによる調査と分析を行った。