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研究紀要

研究紀要:第15号(1999年)

執筆者 論題 要旨
岡 泰正 中国の西湖景と日本の浮絵 -阿英「閑話西湖景『洋片』発展史咤」をめぐって- 本稿は阿英氏の論考「閑話西湖景『洋片』発展史略」の翻訳の紹介を目的としている。この論考は,19世紀中国における眼鏡絵及びのぞき眼鏡の珍しい資料。あわせて、奥村政信など初期の浮絵と、中国の西湖景という洋風絵画との関連について考察している。
三好唯義 貞秀=玉蘭齋ノート ー地図および地図的作品への手がかりとして- 幕末から明治時代初期にかけて活躍した横浜浮世絵の絵師である五雲亭(歌川)貞秀は、橋本玉蘭斎の名で多くの地図を描いた地図作家でもあった。本稿では浮世絵師としての貞秀の履歴をたどり、挿絵画家としてスタートした貞秀にとって、風景や開港場横浜をテーマにする過程で地図と地図学者に接し、また富士登山を体験したことが、彼の画業に大きな影響を与えたことを指摘している。次いで、彼の地図的な作品98点を表にし、地図中に記した彼自身の言葉などを集めた上で、地図学史の上において彼の位置づけを試みる。また、美術史学界ではそれほど取り上げられない貞秀だが、地理学者の山崎直方や矢守一彦などが彼にあたたかい視線を注いでいたことも特記している。
磯辺次雄 神戸市立博物館における学校との連携事業 神戸市立博物館における学校との連携事業について具体例を挙げ、今後の学社融合推進の展望を述べている。
(1)神戸市立博物館における実践 
・校外学習などでの来館 申し込みがあった学校には見学前に事前のオリエンテーションを実施する。事前に学習した疑問などを連絡してもらえればさらに効果があがるだろう。
・展覧会の企画 学校の教育課程に位置づけて活用できる企画展・特別展を多く行ってきた。子ども向けのワークシートを準備したり、体験コーナーを設けたりするなどして、子ども達の興味を引くように工夫してきた。
・学校への学芸員の派遣 チーム・ティーチングのかたちで学校へ学芸員を派遣し、学校教員とともに授業を行っている。
・トライやる・ウィーク 平成10年から実施されたトライやる・ウィークには4校を受け入れ、勤労体験を実施するなどした。
(2)課題
・市外の学校へは、情報提供が不足していることや入館料を徴収していることが課題。入館料については無料化も検討すべきであろう。
・見学の質的充実をはかるために、学校との連絡をさらに密に取る必要があろう。
・派遣授業のますますの充実を学校との連携のもとはからねばならない。
塚原 晃 初代玄々堂松本保居の銅版画 初代玄々堂・松本保居(1786-1867)は、幕末京都における銅版画流行の中心にいた画師として知られている。ただしその作風や技法については平凡なものに終始していたという酷評がこれまで根強かったのも事実である。しかしその銅版画を子細に観察すると、ルーレット・マトワールを用いたクレヨン法、アクアチントといった、これまで例のない技法が駆使されている。保居の最盛期である天保年間の京都は、まだ観光文化都市としての雰囲気が色濃く、その創作活動が受け入れられる余地が多分にあったが、幕末の動乱を迎え、その事業を引き継いだ息子・松田緑山によって玄々堂の銅版画は、技法的にも、主題的にも変質を余儀なくされていった。