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研究紀要

研究紀要:第14号(1998年)

執筆者 論題 要旨
洲脇一郎 外国人と土地所有権 日本において「外国人土地法」が施行されたのは1926年であり、居留地制度が廃止され領事裁判権が撤廃された条約改正の実施から30年近くが経過していた。本論では、外国人にとって土地所有権はどのような意味を持っていたのかという問題意識から、主として神戸を例にとりながらその変遷を概観している。明治期の永代借地権については神戸居留地・雑居地の借地状況を表にし考察を試みている。次に、条約改正後における外国人土地所有権に対する日本国政府の考え方と、「外国人土地法」の背景を論じ、その状況を神戸を例に分析している。
成澤勝嗣 怪鳥カズワル江戸を歩く 寛政元年渡来のヒクイドリ 寛政元年(1789)長崎へ来航した阿蘭陀船が、一羽のヒクイドリを輸入した。日本人がこの鳥を「駝鳥」と呼んでいた時代のことである。このヒクイドリは民間に売られて見せ物となり、翌年から京都、大阪、江戸、伊勢と興行する間に、各地で様々な反響をまきおこす。蘭学者・大槻玄沢はこれが駝鳥ではなく、火食鶏(Emeu)であることを考証し、それをもとに「駝鳥・火食鶏図」という双幅の絵を作った(当館蔵)。かと思えばかたや「ヒクイドリは猪と鷲の混血種である」というような戯作本を発行する人もいた。本稿はそれらを紹介し、一羽の異国鳥が江戸時代にまきおこした波紋の数々をまとめてみたものである。
中村善則 柳田義一氏蒐集 瓦経資料について 柳田義一氏が長年にわたって収集された古瓦資料は、氏の死後、博物館に寄贈された。本稿では、寄贈古瓦資料に含まれていた瓦経資料を、その書写経典、書写方法などについて検討し、出土地が小町塚(三重県)、大日寺(鳥取県)、間山(岡山県)などであることを明らかにした。さらに大日寺瓦経のうちの妙法蓮華経については、執筆者についても若干の考察を加えている。