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日本橋魚廓図(小形江戸名勝図シリーズ)

亜欧堂田善は松平定信に才能を見出されて、谷文晁の許で絵 の修業をしたと伝えられています。しかし実際には、伝統を重んじる職業絵師というよりは、自分の眼に忠実な画家とし ての感覚が勝っていたと考えられます。彼が描いた多くの江戸風景は、正確な景観描写と同時に、従来の画家たちの同種の作品には見られない新鮮な感覚に満ちているためです。例えば、その主題選びと構図は、これまで絵として取り上げられることのなかった場所の景観にも積極的に挑んでいますが、これには同時代の葛飾北斎の風景版画からの感化も考えられます。
20世紀前半に築地に移転するまでは、江戸(東京)の魚市場は日本橋にありました。現在では高速道路が上空をふさぎ、往時の面影は偲びにくいのですが、この銅版画は約200年前の喧騒ぶりを雄弁に語ってくれます。葉書大にも満たない小さな画面にもかかわらず、ここに集まったひとりひとりのしぐさをはっきりと識別できます。田善の卓越した銅版技術が、リアリティあふれる群衆表現を可能としました。

【江戸の絵画】
名称 日本橋魚廓図(小形江戸名勝図シリーズ) にほんばしぎょかくず こがたえどめいしょうずしりーず
作者名 亜欧堂田善 あおうどうでんぜん (1748-1822)
時代 江戸時代/19世紀初期
材質 銅版筆彩
サイズ 11.8×17.4
員数 1枚
その他の情報 落款「亞歐堂」

来歴:池長孟→1951市立神戸美術館→1965市立南蛮美術館→1982神戸市立博物館

参考文献:
指定区分
分野 銅版画